横浜税関ファインプレー! 盗難車の輸出を阻止
横浜税関は2025年3月26日、「令和7年摘発報道発表」を更新しました。
発表では、3月に摘発した盗難車の不正輸出事件2件の詳細を明らかにしています。
今回の事件は2024年5月と同年8月に横浜税関で発生しました。「虚偽証明輸出」だったということです。
これは通関手続きの際に職員がコンテナを検査したところ、輸出の申告があったものとは違うクルマが詰められており、これを発見して輸出される直前で阻止しました。
5月の事件ではトヨタ「アルファード」(先代・時価約500万円)とレクサス「LX570」(先代・時価1000万円)の2台が詰められており、行先はタイ王国でした。
8月の事件はアルファードが4台(いずれも現行・時価約3200万円)詰められ、こちらも行先はタイ王国でした。
しかもその後の捜査の結果で、いずれのクルマとも盗難車であったことが発覚。2025年2月から3月にかけて関税法違反として、横浜地方検察庁にそれぞれ告発したということです。ちなみに、この2件の事件は同じ犯人だったようです。
発表資料には盗難車が詰められた状態の当該コンテナの写真が掲載されており、クルマが入っているとバレないようにするためか車体ギリギリの小型のコンテナに詰め込んでいたもようです。
LXはそのままの姿ですが、アルファードはフロントバンパーやリアバンパーなど一部の部品が外されています。
この真意は不明ですが、「クルマ丸ごと」だと検査が厳しくなるため、「解体部品です」と言い張って申告した可能性も考えられます。あるいは、盗難車の出どころを隠すため、その足跡がバレないように細工した、という可能性もあります。
近年、自動車盗難の件数はセキュリティ装置の標準装備や市中の防犯カメラ設置などから減少傾向にあり、2025年は6080件(警察庁発表)とピークの1割以下に抑えられているものの、盗難は特定の車種で際立って多く発生しています。
その理由として、窃盗団は盗んだクルマを海外輸出して中古車として売りさばくのが目的としており、海外でニーズが高いモデルを集中的に狙っているためです。
特に今回のアルファードやLXは、豪華なクルマが支持される中東地域で非常に人気があり価格も高いため、狙われるリスクが非常に高い車種のひとつです。これ以外にも「ランドクルーザー」などもあります。
また、東南アジア地域では実用の道具としてトヨタ「プリウス」「ハイエース」が人気で、こういった地域への輸出を目的とした盗難も発生しています。
さらに、1980年代から2000年代初頭の国産スポーツカーが世界的に人気であることから、トヨタ「スープラ」や日産「スカイラインGT-R」「シルビア」なども盗難されています。
SNSなどでも盗難車情報が頻繁に共有されていますが、一度盗難されると、ナンバーを付け替えられたりして追跡が困難なほか、すぐに輸出される手続きが取られるため、コンテナに詰められると、ほとんど取り返すことはできません。
そのため、実質的に税関が「最後の砦」になっています。
こうした状況から税関では水際取り締まりを強化しており、中古車では正しい手続きが取られたどうかを確認するため、「輸出抹消登録証明書」などの書類の提出を求めたり、車台番号の確認を実施。
さらに、「大型X線検査装置」でコンテナを開けることなく不正輸出を発見できるようにしています。
また、盗難車のみならず、不正薬物や拳銃などの社会悪物品や、特許権や意匠権などを侵害するいわゆる「偽ブランド」の“バッタモン”などの水際取締りも強めているといいます。
一般からの密輸情報の提供も呼びかけており、公式の情報提供サイトや密輸ダイヤル「0120-461-961(シロイ・クロイ)」でも受け付けています。