数分で盗まれるレクサス…驚きの手口「CANインベーダー」とは 組織的関与?解体ヤードの外国人直撃も メ〜テレ
- 2022/8/18
- ニュース

自動車の盗難被害が全国ワーストとなっている愛知県。車を傷つけず、わずか数分間で盗み出してしまう驚きの手口と、その対策に迫ります。
お盆休みの先週。名古屋市内のカー用品店では、こんな展示会が――。
「こちらは盗難被害に実際にあった車です。中を見ると電子機器が盗まれています」(記者)
今年1月に名古屋で盗まれ、約ひと月後、変わり果てた姿で見つかったトヨタのプリウス。フロントバンパーやヘッドライトなど、外側の部品だけでなくカーナビや車内のパーツも外されています。消火剤のようなものが、まかれているのは犯人が、指紋などの証拠隠滅を図ったものとみられます。
「愛知県内では自動車盗難が多発しており、前年同期と比較してプラス90件。全国ワーストになっている」(愛知県警 生活安全総務課 寺田裕志 次長)
展示会に協力した愛知県警。今年、県内で確認された自動車盗難の件数は、先月末の時点で500件を超え、全国ワーストとなっています。
特に被害が多いのはランドクルーザー・レクサスLX・プリウス。この3車種だけで被害の半数以上を占めているのです。
浸透しない愛車のセキュリティー
自動車盗難の手口、最新事情を探る
名古屋の街で防犯対策について聞いてみると――。 「自分でセキュリティーを後付けでつけています。前に車を盗まれたことがあるので」(50代男性) 愛車を守る対策をしているという人がいる一方で――。 「特に何もしていないです。盗まれるような車は持っていないので」(30代男性) 「車が古いので十数年乗っているから、もう対策をやっていない」(50代男性) 特に何もしていない、という声も多く聞かれました。 しかし、いま自動車盗難の手口は巧妙化を続け、背後に大掛かりな組織も確認されています。その最新事情を、取材しました。
全国で相次ぐ高級車盗難
800万円を超える車が10分弱で盗まれる(提供:SOLオートモーティブ)
去年8月20日、午前3時ごろ。名古屋市内の住宅のガレージに、2人組が侵入しました。ターゲットは、1台の高級車です。 わずか2分後、車が動き出しました。異変に気付いた持ち主の男性が、とっさにドアにしがみつきますが、犯人はスピードを上げ逃走。男性は振り落とされ、両ひざにケガをしました。 こちらは千葉県・木更津市。狙われたのは、自動車販売店です。 「販売価格で820万円」(SOLオートモーティブ 下條嘉久 店長) 去年7月の深夜。雨が降りしきる中、傘を差した1人の男が、自動車販売店の敷地内へ侵入。目当ての高級車に近づきます。と、その時、車のライトが。 「この時間帯もけっこう車が通っているので、ちょこちょこ隠れながらという感じですね」(下條嘉久 店長) 男は、車の助手席側に向かい何やら作業を開始。すると7分後…。 「ドアミラーが動いたので、車が開いた」(下條嘉久 店長)
あっという間に、800万円を超える車が盗まれてしまったのです。
「衝撃でしたね。10分弱で車のエンジンまで」(下條嘉久 店長)
店長の下條さんは、警察に被害届を提出しました。すると今年5月。
「東京の警察から連絡がありまして、車両を盗んだ『犯人が捕まった』と」(下條嘉久 店長)
Q:車は
「車は戻ってこないです」(下條嘉久 店長)
Q:どこにいったかも
「わからないですね」(下條嘉久 店長)
その際、警察官は犯行の手口について――。
「『CAN(キャン)インベーダーという新しい手口なんじゃないか?』と」(下條嘉久 店長)
最新手口「CANインベーダー」を実演
「CANインベーダー」の手口で、4分足らずで動き出す高級車
聞き慣れない「CANインベーダー」という手口ですが、実は愛知県でも――。 「最近では、CANインベーターと呼ばれる電子的な犯行ツールを使用して、わずか数分で車を盗む手口が発生しています」(愛知県警 生活安全総務課 寺田裕志 次長) 今月3日、愛知県警はレクサスLXを盗んだ疑いで男を逮捕し「CANインベーダー」を押収したと発表しました。今年に入って2例目の押収となった、CANインベーダー。一体どのような手口なのか? 盗難対策に詳しい名古屋市内の自動車修理会社の協力を得て、高級車で検証してみます。 「スタート」(記者) 悪用される可能性があるため、詳細は明かせませんが、もちろん、車のキーは使いません。すると3分後――。 「車の鍵がいま、開きました。そして有馬さんが車の中に入りました」(記者) さらに、車内で作業をすること数十秒――。 「いまエンジンがかかりました。4分も経っていません」(記者) 「動かします」(脇田ボデー 工業 自動車盗難対策室 有馬裕介 室長) なんとわずか4分足らずで、キーを使わずに車が動いたのです。 「すごいことだと思う。短時間で走り出せちゃう。鍵も無いのに」(脇田ボデー 工業 自動車盗難対策室 有馬裕介 室長)
キーが無いのにエンジンがかかる仕組み
「CAN=Controller Area Network」車の電子回路に侵入する手口とは
自動車盗難の撲滅に力を入れている、日本カーセキュリティ協会の攪上さんは、CANインベーダーの仕組みについて、こう説明します。 「コンピューターがある。いわゆるCANですね。そこに(特殊な)機械をつなぐことによって、(車の)セキュリティーの解除、ドアの開錠、エンジンのスタート。ここまでできてしまう」(日本カーセキュリティ協会 攪上智久 代表理事) 「Controller Area Network」の頭文字を取った「CAN」。車の内部にある電子回路に侵入して、エンジンを動かす手口です。
中東やアフリカで根強い需要
盗難車を買わされそうになったと語る解体業の男性
盗まれた車は、どこに運ばれるのか。 「中東とかアフリカとか、道路が舗装されていないような国でも日本車は壊れないですから。(盗難車を)バラバラにして部品として持っていくケースもあれば、車のままもっていくのも最近は多い。密輸ですよね」(日本カーセキュリティ協会 攪上智久 代表理事) 今年6月、愛知と千葉の県警合同捜査本部は、自動車窃盗団10人を一斉に検挙しました。指示役や実行役の日本人によって愛知県内で盗まれた車は千葉に運ばれ外国人の解体業者たちに売却。その後、車は船で海外に密輸されていました。 千葉県内には、「窃盗団に盗難車を買わされそうになった事がある」という解体業者が。 「何年か前に(車を)取りに行ったら、盗難車だった」(解体業の男性) Q:どこで気づいた 「車がちゃんと走るし(どこも壊れていないから)おかしいなと」(解体業の男性) この男性が不自然な点を指摘したところ――。 「(窃盗団の男が)逃げて近所の小屋に逃げ込んだので、3人くらいで抑え込んで警察に通報したことがあった」(解体業の男性) 窃盗団は、より高い値段で買ってくれる外国人の解体業者に盗難車を売ることもあるそうです。 「外国人に売った方が儲かるもん」(解体業の男性) Q:高く買ってくれる 「買ってくれる。(密輸の)ルートを知っているから連中は」(解体業の男性)
解体ヤードで直撃取材すると…
解体ヤードには傷一つ無い日本の高級車も
千葉県内の複数のヤードを取材すると――。 「住宅街のすぐ脇にあるヤードですが、車が放置された状況です」(記者) 中には、傷一つない日本の高級車も。するとヤードの奥に外国人の姿が。 「こんにちは」(記者) 声をかけた、その直後――。 「カメラを見たらいなくなった?」(記者) その後も取材を続けましたが、盗難車に関する情報はなかなか掴めませんでした。千葉県警によると、県内には、約600カ所のヤードが存在。その一部は国際犯罪組織による盗難車の解体や、密輸の作業場になっているとみられ、今後、実態解明を進めていくということです。
効果的な盗難対策とは
ハンドル固定やタイヤロックなど目に見える盗難対策を
巧妙な手口で、組織的に行われている自動車の盗難。自分の車を守るには、どうすれば良いのでしょうか? 「ハンドル固定やタイヤロックなど、目に見える対策をすることで狙われにくくなる効果がある」(愛知県警 生活安全総務課 寺田裕志 次長) 有効な手段として、タイヤやハンドルが動かせないよう2重・3重のロックをかけることが重要です。さらに効果的なのが――。 「電子的なセキュリティーを追加することで、防犯効果が高まります」(愛知県警 生活安全総務課 寺田裕志 次長) 電子セキュリティーを搭載した車では――。 「このようにドアを開けると、セキュリティが作動します」(イエローハット 西田 武 副店長) さらに――。 「純正のカギを持っていたとしても、エンジンがかからないようになっている」(イエローハット 西田 武 副店長) 車の通信システムとは別の、独立したセキュリティーによってカギをかけるため、CANインベーダーにも有効だということです。 まだまだ続く夏休み。警察は、車を狙った様々な犯罪に注意が必要だと話します。 「帰省先や行楽先へお出かけでも油断することなく、鍵かけや車内に貴重品をおくことがないよう、防犯対策をしっかり取っていただくようお願いします」(愛知県警 生活安全総務課 寺田裕志 次長) (8月17日15:40~放送メ~テレ『アップ!』より)